民事再生

民事再生とは
民事再生は、債務者が資金に行き詰まったり債務超過の恐れがある場合に、裁判所の関与の下で、経営権はそのままにしながら事業の再生を図る方法です。

民事再生のメリット
まずは、民事再生のメリットを確認していきましょう。

経営権を維持できる
民事再生の大きなメリットは、会社を維持することができる上、従来の経営者による経営権も継続できることです。
会社が倒産するときの法的整理の方法には、いくつかの種類があります。
中でも、民事再生は再生型の倒産手続きなので、破産などの清算型の手続きとは異なり、会社も事業も存続させることができます。
また、再生型の手続きの中でも、民事再生の場合、原則的に、従来の経営者が留任することが認められています。
会社更生法を利用する場合には、財産管理権や経営権が更生管財人に移ってしまいますし、旧経営陣の責任を問われることも多いのですが、民事再生の場合、従来の経営者がリーダーシップを発揮することにより、会社を守ることができます。
多くの経営者の方は、たとえ会社債務の整理をしても、自分が経営に関わっていきたいという希望を持っていることが多いので、このことは大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、経営者が留任するためには、債権者の納得が必要です。了解が得られなければ、交代が必要になるケースもあります。

申請が認可されると債務が大幅に圧縮される
民事再生をするときには、裁判所に申請をして、再生計画を認可してもらう必要がありますが、計画が認可されると、債務を大幅に圧縮してもらうことができます。
圧縮された債務については、原則的に、その後10年の間において、元本と再生手続開始決定前の利息と遅延損害金を分割払いすれば良いことになっています。
その間、資金繰りの負担が非常に軽くなるので、十分に会社を再建できる機会を与えられます。
私的整理ならば、このような大幅な減額は困難なので、多額の債務があっても整理できることが、民事再生の大きなメリットと言えるでしょう。

債権者の議決権で50%以上の賛成で認可される
民事再生をするときには、最終的に、裁判所において再生計画案を認可してもらう必要があります。
そのためには、「債権者の議決権の50%以上の賛成」が必要です。議決権の過半数というのは、債権者の人数と債権額の過半数という意味です。どちらかの過半数が反対すると、再生計画案は認可されません。
債権者が10社あれば、5社以上の賛成が必要ですし、1億円の債務があれば、5000万円以上分の債権者による賛成が必要です。
50%以上の賛成を得られた場合、残りの債権者が全員反対していても、再生計画が認可されて債務の圧縮を受けられます。
私的整理ならば、個々のすべての債権者の同意を得なければならないので、ハードルが高くなりますが、民事再生ならば、反対している債権者がいても、強制的に債務を圧縮できることが、大きなメリットとなります。

短期間で再建が可能
民事再生は、比較的短期間で終わる手続きです。
申立をしてから再生計画の認可まで、約半年ほどしかかかりません。半年で、経営再建の道筋をつけることができる、ということです。
これが会社更生などの手続きの場合には、手続きも大規模になる関係で、数年かかってしまうことなどもあります。
通常、会社再建の手続きは、早く終わらせて次に進みたいと考える経営者の方が多いでしょうから、このように、短期間で再建ができることも、民事再生の大きなメリットと言えるでしょう。

手続き開始決定があると、取り立てが止まる
経営が悪化している企業の場合、すでに債務の支払いが滞っており、債権者から取り立てが来ているケースがあります。
このようなとき、民事再生をすると、裁判所が「保全処分」という命令を出してくれます。
これにより、弁済(債務の支払い)が禁止されるので、債権者からの督促が止まります。
手形の不渡りや取立が行われなくなるので、安心して経営再建に取り組むことができます。
私的整理の場合、このような効果がないので、取り立てが次々に来ているような状況では、会社再建を図ることが難しくなります。
このように、債権者からの取り立てを止めることができる点も、民事再生の大きなメリットと言えるでしょう。

民事再生におけるデメリット
民事再生には、以下のようなデメリットもあります。

申請の際にお金が必要
民事再生を申請するときには、ある程度のお金が必要です。
まずは、裁判所に支払う予納金と弁護士費用がかかります。
民事再生の予納金は最低200万円で、債務の額が多くなると、増額されます。
弁護士費用も、数百万円程度かかることが多いです。(ただし、会社更生になると、数千万円単位の予納金が必要ですから、それと比べると、民事再生の方が、費用は安いです。)
また、民事再生を利用する場合には、その後会社が存続して経営を続けていかなければならないので、会社を動かしていくための資金繰りも必要です。
キャッシュがないから民事再生をするのに、反対にキャッシュを要求されてしまうのです。
民事再生で再生計画が認可されても、しばらくは資金繰りが厳しい状態が続いてしまうケースもよくあります。
このことは、民事再生のデメリットの1つと言えます。

再建計画が認められないと破産手続きへ
民事再生では、過半数(債権者数と債権額)の債権者による反対がなければ再生計画が認可されることがメリットだと説明しましたが、このことは、逆に言うと、過半数の債権者が反対したら、再生計画が否決されてしまうということです。
再生計画が否決されて民事再生が廃止(終了すること)されると、裁判所は、職権によって破産手続き開始決定をすることができるとされています(民事再生法250条)。
つまり、民事再生に失敗すると、自動的に破産に移行してしまうということです。
破産になると、会社や事業を存続させることはできなくなり、会社は清算して消滅してしまいます。
また、清算の手続きを行うのは「破産管財人」であり、元の経営者が経営再建に関わることはできません。
なお、再生計画が否決されても、破産手続き開始決定が行われないこともあります。民事再生法250条は、「破産手続き開始決定することができる」とするのみであり、当然に破産に移行するとは規定していないからです。
ただ、破産に移行しないとしても、再生計画が否決されたのなら、債務は圧縮されずにそのまま残ってしまいます。
つまり、申立前と何ら変わらない状況が続いてしまうということです。
支払いができなければ、何らかの整理手続きをとる必要があり、最終的に、自ら破産を選ばざるを得ないこともあります。

債務が圧縮されても抵当権や税金の請求権は残る
債務の支払いが苦しい会社は、所有する不動産を抵当に入れていることもありますし、税金を滞納しているケースも多いです。
民事再生を利用しても、担保権を抹消することはできませんし、税金を減額してもらうこともできません。
抵当権や税金は、そのまま残ってしまうということです。
そこで、抵当権者に支払いをしないと、抵当権を実行されて土地や建物を競売にかけられてしまう可能性がありますし、税金については、随時支払をしていかないと、滞納処分を受けて、資産を差し押さえられてしまうおそれもあります。
会社更生法による手続きであれば、担保権や税金による請求についても会社更生の手続きに従うことになるので、これと比べると、民事再生で抵当権や税金がそのまま残ることは、デメリットの1つと言えるでしょう。

信用を失う
民事再生をすると、会社の信用が失われることは、やむを得ないでしょう。
実際には再生再建を目的とした手続きではありますが、一般的には「民事再生=倒産」というイメージがあり、破産との区別もわかっていない人もいます。
世間でイメージダウンするだけではなく、取引先や金融機関における印象も悪くなることは確実です。官報という政府の発行している刊行誌にも、公告(情報掲載)が行われます。
商売は信用が命ですから、このような信用失墜によるデメリットは大きいと言えます。
以上のように、民事再生には、メリットもデメリットもあります。
事業再生に取り組む際には、各種スキームの特徴を把握して、最適なものを選ぶ必要があります。
自社では適切な判断が難しい場合、サテライトがお手伝いいたしますので、お気軽にご相談ください。
